やまとは、我が家の屋号であります。私で十六代目になる当家は、初代(一六五二年没)から十一代(一八五九年没)までは代々藤佐衛門を名乗り、その頭文字の藤を取ってやまととしたようです。
現有する漆塗の角樽や番傘・箕・笊等にそのやまと墨跡が残されています。
出羽鶴酒造と刈穂酒造の前身である落合酒造(株)と神宮寺酒造(株)の設立は大正二年(一九一三年)ですが、伊藤家の家業としての創業は江戸末期(一八六五年)の第十二代重四郎の時からであり、我が家の歴史からすれば、酒造業は私でまだ五代目ということになります。
薄暗い土蔵の片隅におかれたやまと印の朱塗の角樽のピンと張った角の美しさ。堤灯の柔らかな曲線の暖かさ。番傘の手の込んだ竹組の凛々しさ。今は使われることもなく眠っているけれど、とても捨てる気持ちにはなれません。
それは懐古の情だけではなく、これらの持つ芸術的ともいえる機能美に心打たれるからであり、造り手の心が伝わってくるからでしょう。
呑み手に満足と感動を与えることが出来る酒を目指して「やまとしずく」を酒銘といたしました。心ある呑み手の方々に「やまとしずく」を末永くご愛飲いただけますよう、よろしくお願いいたします。
秋田清酒株式会社 代表取締役社長 伊藤 辰郎